皇室御用達とは、言葉の通り皇族の方々にも愛用されている品々のことを指します。
宮内庁御用達とは、その皇室御用達とされる品々の中で、公式に宮内庁が「御用達」として名乗ることを許可したものが該当します。
言葉の意味としては、皇室御用達も宮内庁御用達もその対象としている範囲は近いように思われますが、明確に異なることが分かりますね。
また、宮内庁がわざわさ「宮内庁御用達」の制度を許可制にした理由には、そのネームバリューに目を付けて「勝手に宮内庁御用達を名乗る業者」が増えてきた背景があります。(宮内庁御用達とはより)
御用達制度自体は、昭和29年(1954年)に廃止されています。理由については様々あるようですが、戦後の節目やアメリカによる統治、経済改革、天皇という存在の在り方の変化(神格化から象徴天皇へ)など、いろいろな社会変化が関係しているようにも思います。
制度が廃止された現在でも、「宮内庁御用達」という言葉を使用し続けている業者も若干ながらあるようですが、制度自体がすでに廃止されたものであること、虚偽記載に当たるのではないか、など、その名称使用については現代の社会風潮的にもあまり好ましいようには思いません。
もっとも、現在でも宮内庁御用達を名乗っているからといってそれが嘘である訳ではなく、かつて宮内庁御用達の栄誉を賜った歴史を持つという意味合いで表現していると捉えても差し障りありません。
いずれにせよ、現在の消費者優位な社会風潮においては、「制度自体が廃止されているのに、嘘じゃないか!」などといった主張も出てきておかしくないため、納入業者が積極的に「宮内庁御用達」という言葉は使用しない方が好ましいように思います。
そういった理由もあってか、ほとんどの宮内庁御用達業者は、自ら「宮内庁御用達」と銘打っていません。私は宮内庁御用達制度があった時代を生きていないので分かりませんが、宮内庁御用達制度があった時代であっても、天皇への配慮や天皇を一個人として考えたときのプライバシー保護の観点から、自ら積極的に「宮内庁御用達」をアピールする業者もあまり居なかったのではとも思います。
本当に天皇への配慮や敬いがあるのであれば、恐れ多くてそのネームバリューを商業利用できないのではないでしょうか。
現在では、「宮内庁御用達」という言葉よりも、「皇室御用達」という言葉に言い換えて表現しているのを良く目にします。この中には、元々宮内庁御用達を拝命していない業者の他に、かつて宮内庁御用達を拝命した歴史を持つ業者も含まれます。
「かつては宮内庁御用達であったけれども、制度が廃止してしまった以上、これを銘打つのはあまり好ましくない。それならば、皇室御用達という言葉で言い表そう。」というような意向があるのかもしれません。
「皇室御用達」という言葉や「宮内庁御用達」という言葉は、それ自体に信頼性やブランド力をもつ言葉です。この言葉を積極的に利用するか否かについては、それぞれの業者オーナーの意向や考え方に依存します。商売に積極的な業者オーナーであれば、これをどんどんネームバリューとして利用しようと考えるのも、ある程度自然な成り行きだとは思います。
単に「皇室御用達」「宮内庁御用達」という言葉を比べるだけでも、その背景にいろいろな歴史や意図が見え隠れしていて、結構面白いですね!
最後に、宮内庁御用達の制度自体が廃止されていようがいまいが、宮内庁御用達を拝命した納入業者が高い信頼と確かな技術を持っていることに変わりはありません。数百年も昔から代々その家業を受け継いでいる老舗もあり、日本の歴史文化を彩ってきた素晴らしい業者が多いと私は感じています。