「宮内庁御用達」が制度として公式に始まったのは明治24年(1891年)です。戦前には「宮内省御用達」と呼ばれていました。
昭和22年(1947年)に「宮内省」が「宮内庁」に名称変更されるに伴い、「宮内省御用達」も「宮内庁御用達」と呼ばれるようになりました。
以下、混乱を避けるために「宮内庁御用達」で統一して話を進めます。
宮内庁御用達が制度とされる前には、宮内庁に出入りする業者は誰でも「宮内庁御用達」を名乗ることを許されていました。
ところが、この名誉をあからさまな宣伝目的に利用する業者や、自称する業者が次第に増えていきました。そのため宮内庁は制度として正式に適用し、誰しもが名乗れないよう厳しい審査を設けるようにしました。
宮内庁御用達の制度ができた背景には、積極的な理由ではなく、勝手に宮内庁御用達を名乗るいい加減な業者を取り締まるという消極的な理由が先行していたんですね。
宮内庁御用達には「納入と献上」の2種類があります。宮内庁が予算の中らお買い上げになるものを「納入」、業者側が無料で差し上げるものを「献上」といいます。
無料で差し上げるといっても、誰しもむやみに差し上げられるわけではなく、こちらも厳正な審査を通って品質が保証されて初めて献上されます。
宮内庁御用達と名乗ることができた戦前よりもはるかに昔から、朝廷・宮中・幕府などの皇室御用、幕府御用を代々承っていた業者は数多くあります。数百年の歴史をもつ業者も存在し、遠く奈良時代(710~749年)にまで遡る業者も存在することに驚きます。
老舗や日本の歴史、郷土史などに興味のある方々は、宮内庁御用達の老舗の歴史に心踊らされることでしょう。私も日本史が好きなので、宮内庁御用達の業者が創業した年代を確認しては、その時代その時代の文化や歴史を頭に思い描いて空想しています(笑)。